実験スピリッツ

経済・市場・思想の陰謀論をまとめます(ネタ要素強め)

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僕は全ての芸人を尊敬している。キングオブコントに参加した話。

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今週のお題「私の流行語大賞」とのこと。

さて、昔から僕は瞬間風速的に大きな夢を抱く癖があります。

直近では大学生の頃に「お笑い芸人になりたい」と思い、素人ながらキングオブコントの地方予選に参戦した経験があります。ちなみに当時のキングオブコントは素人でも参加できました。

これは短期間を本気でコント師として活動し練習を積んだ実録話です。

当時、最低限漫才についても勉強しました。

漫才入門 ウケる笑いの作り方、ぜんぶ教えます

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芸人として活動開始までの経緯

ぼくは小学校低学年の頃から漫才を見るのが死ぬほど好きで「爆笑オンエアバトル」は毎週欠かさず観ていました。そして番組の最後に司会者がこう締めくくるのです。

「新しい笑いを作るのは、挑戦者の皆さんと客席の皆さん、そして、テレビの前のあなたたちです!」

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ぼくの流行語大賞はこれです。

信じられないかもしれませんが、この言葉がなんと10年近くも僕の頭に響き続けたのです。それはそれは悪魔に取り憑かれたような感覚でした。

そして、ぼくはいつしか恐ろしい妄想に襲われるようになるのです。

僕も笑いの世界に一石を投じたい、このままではお笑いブームが完全に下火になる(使命感)。いや、もしかすると一世を風靡できるかもしれない(願望)。ついにテレビで見ていた芸人達と肩を並べて、僕も電波の向こう側へ行けるんだ(錯乱)。キングオブコントの優勝賞金で車買おう。今後のギャラはこれくらいかな~…(アイハブアドリーム)。

当時の僕はそのような自制心を保てないトランス状態にあって、判断する能力が著しく低下していた可能性があります。何が言いたいかと言うと、つまり「ぼくに刑事責任はない」ということです。

相方探しが厳しい

何かに取り憑かれた僕は知り合いに片っぱしから連絡を取りましたが、全然相方が見つかりません。やけになったぼくはダメもとで「トゥギャザーしようぜ」とかなんとか言っていたら、最良の相方を見つけることになります。

彼は高校の同級生で、当時は県外の大学に通っていました。なぜこんな要求に応えてくれたのか質問したことがあります。曰く「しつこかったから」だそうで、僕がトランス状態だったとは言えそんなに何回も「トゥギャザーしようぜ」って言ってたのかと思うと身震いしました。てか冷めすぎだろ、というくらい冷静なナイスガイです。

ネタ作り

しかし、恐ろしいほど相方探しに苦戦した為、本番の舞台までキッチリ2週間しか残されていませんでした。

しかも相方は県外の人間なので、電話でネタ作りをすることに。さらに電話に出んわでなかなか話し合いの場が持てません。てゆーか電話って、全然創造的なネタが出てこないんですよね。

どんな漫才師を手本とするのか、シュール系か、ベタか、リズムネタか、様々な話し合いはしましたが、僕らの軸が全く定まりません。軸が決まらないって致命的ですよ。

結局サンドイッチマンのような王道スタイルを目指すことになります。いや、外見じゃないですよ。

そして、とうとう本番まで42時間を切ったとき、ようやくキングオブコント開催地で相方と顔合わせしました。居酒屋で久しぶりに再会を果たし、酒を飲みながらネタ合わせをしてみます。

あれ、まあまあイケると思っていたネタが全然笑えない?酔っ払ったからか?ああ、酔って感覚が狂ったんだろー。絶対そう。うん。安心安心。ひと休みひと休み。。っでもさ、誰かに見てもらった方が良くない?

ということで、急きょ暇そうな友人を呼んでネタを披露します。全然ウケねえ。身内相手にすらウケねえ。逆に笑えてくるやん。

というのも、僕らはコントに必要な演技力、声量、立ち振る舞い、テンポなどの練習を全くしてこなかったのです。

素人が演技をするというのは見るに堪えないものです。今世紀最もグダグダな状況はあの居酒屋の席で起こりました。もはや「GUDA&GUDA」というおしゃれブランドが立ちあがりそうなくらいシュールな空気でした。

例えば「歩いて立ち止まる」という所作ひとつとっても、人物の感情によって色々な動作が考えられます。馬鹿にされるかもしれませんが、初めての演技をしてみるとフラフラしたりして自然な動作って意外と難しいんですよ。しかも、はっきりと発音しなければ何を言っているか聞こえないというネタ以前の問題でした。

アンガールズなら許されるけど、仮にも僕らはサンドイッチマン一派。「そんなグダグダは流派じゃない。」とかほざきながら、プライドを胸に特訓を始めることになります。この致命傷とも言える問題を抱え、3分という短いネタに全てをかける決意で臨みました。

練習していると、ネタの変更や演技の議論で相方と本気で喧嘩をしました。挙句の果てには「師匠がいないからダメなんじゃないか」とかいう今更論で盛り上がったりもしました。寝る間を惜しんで18時間以上練習した悪夢のような夜。

しかし、あの狭い空間には確かに夢がありました。どの参加者にも負けないくらい「キングオブコントでコントになるんだ!」という夢を持っていたと思います。この頃には、別にキングにはならなくてもいい。コントで笑いを取りたい。それだけでした。

でも必死過ぎたのか疲れすぎたのか、その場の記憶がほとんど残っていません。カラオケボックスの延長料金が半端なかったことだけはよく覚えています。

KOC会場へ行く

どうでも良いですが、キングオブコントを以下KOCと略します。参加者としてはKOCという「通っぽい呼び方でいきたい」とさっきからずっと思っていましたがタイミングが掴めませんでした。

で、僕らが参戦した地方大会では一般客が300名ほど舞台を見に来ています。しかも、チケットはお金を取っていますからね。

「300人の前でコントするって馬鹿じゃない?」と今更ながら冷静な判断ができるようになり、自分の愚かさを呪う僕。口ぱっさぱさですからね。

以下会場のイメージ図。(※この写真を人数を数えたら約120人でしたので、これの2.5倍くらいの規模)

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あのお笑いの定番出囃子、イズゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴ―、ゴゴッー、ゴゴッー、ゴゴッー(曖昧さ回避→Fatboy Slim - Because We Can参照)で暗転からまさかの素人が出てくるんですよ?ハードル上がり過ぎ。逆にお客さんがビビるような状況が生まれそうです。今想像しただけでも吐き気がしてきますね。

しかし、舞台上では前日からの猛練習と疲労がピークに達していたことから緊張する暇もなく、ほぼベストパフォーマンスでコントをやり遂げました。

結果はややウケ。

順位は30組中順位なし。結果発表は9位までだったので、要するに同率最下位です。お客さん達の顔や反応を見る余裕はありませんでしたが、笑ってくれた方々に心から感謝ですね。コント終わりの「ありがとうございました」と言った時の達成感は今でも強烈に覚えています。どれくらいかと言うと、横山三国志を全巻読み終えた時くらいですかね。

三国志 全60巻完結セット (希望コミックス)

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ちなみに全ての参加者のネタを見ましたが、ぼくら以外に素人はいませんでした。そもそもコントで衣装も道具も用意していなかったのは僕らだけで、みんな小道具を用意していました。ネタ作りに必死過ぎて小道具のことを完全に忘れていましたよね。あの場では普通に私服って裸より恥ずかしかったですよ。

↓これくらいカオスな芸人もいました。(イメージ)

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芸人について分かったこと

大そうなものではなく、想像力を働かせれば簡単に分かるものですが実体験として2点学ぶことができました。

まず一点目は、芸人の醍醐味はお客さんを笑わせた瞬間だということ。ぼくらも笑ってくれているお客さんの声はしっかりと聞くことができました。もしも会場全体を笑わせる爆笑の渦が起きたら物凄いエクスタシーだろうなという想像は難くありません。体験したことありませんが、僕は会社員をやっていてそこまでのエクスタシーを得られたことがありませんね。

芸人さんの下積み時代は苦しいと聞きます。しかし、爆笑を起こすエクスタシーが辞められないのだと思うんですよね。だから、どんなに苦しくても芸人を目指す人が居て、いつも僕らをエクスタシーに誘ってくれます。

もう一点は、マネタイズできるかどうかは分からないと言うことです。ネタを作って見れば分かると思いますが、これが面白いのか面白くないのか自分では全然分からなくなってくるんですよね。たまにマネタイズできていない芸人さんでネタについて「自分たちのネタが面白いのか分からない」と言う方がいます。

ぼくの場合でも全然意図していなかった箇所で笑いが起きていたりして意外だった状況がありました。マネタイズするには最低限実力も必要ですが、おおよそ音楽のような芸術分野に近いので、マネタイズできるかどうかは全然分からないというのがこの世界だと思いました。

エクスタシーとかマネタイズでざわつかないでください。

観たことがない人は是非舞台へ行ってほしい

僕は芸人のおままごとをやってみてプロ芸人を尊敬するようになりました。

もしも漫才を見に行ったことがない方は、是非舞台へ行ってみて下さい。声量、演技力、ネタ、全てが計算尽くされている漫才・コントはやっぱり違います。そして、テレビではつまらないと思っていたプロ芸人も生でネタを見たらやっぱり凄い迫力です。ましてや、無名のプロ芸人でさえむちゃくちゃ面白い。

僕は漫才を沢山観に行っていますが、舞台はテレビの5倍以上笑えますねたぶん。保証はしませんが。しかし、プロ芸人様をつまらないと叩くなら舞台を見てから判断して下さい。そうでなければ彼らの実力を絶対に分かっていません。

長々と駄文にお付き合いありがとうございました。

それでは、最後にひとつ言わせて下さい。

「ほな、やめさせてもらうわ。」