実験スピリッツ

経済・市場・思想の陰謀論をまとめます(ネタ要素強め)

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自転車で四国一周したときの恐怖体験。

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陽射しが真上から降り注ぐ暑い夏の季節。これは当時17歳のぼくが部活休みの7日間を利用して、自転車で四国を一周をしたときの話だ。

孔子曰く「15にして学を志した」らしいので、ぼくはサバイバル生活を通して、17にして立つことを決めた。それは遅れてきたスタンドバイミーの気分だった。

もちろんテントのような高価な代物は持ち合わせていない。装備品はママチャリとハンパン、Tシャツ、パーカー、デジカメ、お金のみ。

僕は部活の友人達と約束をしていた。その約束とは「四国一周が達成失敗」「7日後の部活までに帰れない」ことになれば、「ぼくは丸坊主にする」という大見得を切っていたのだった。

当時は中国地方に住んでいたので、予定としては四国に上陸してから5日間で四国一周分の約1000キロを走らなければいけなかった。1日あたり約200キロ以上を走らなければいけない。ママチャリなので平均時速10キロだとしたら、移動時間は1日20時間の計算である。実際の移動経路は下図の通り。

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実際やってみると1日22時間くらいは走らなければならなかった。疲れ過ぎて寝る時は駐車場や公園で大の字になって寝た。

初日の夜は、コンビニの裏で大の字になっていると地元のヤンキーに絡まれた。でも一緒にカップ麺を食べて仲良くなった。

二日目の夜は、コンビニバイトの店員さんに汚物をみるような目で心配された。でもバイトのお兄さんは内緒で廃棄処分の弁当を恵んでくれた。

三日目は、さすがに風呂に入らなければいけないと思い、マンガ喫茶でシャワーを浴びて着替えた。なんだかんだで三日間で睡眠は5時間程度である。ぼくはもうほんとに心底、これほどかというほどに疲労困憊していて、こっそりシモの処理を施した(仕方なし)

そしてこの三日目の夜、ぼくは本当に怖い体験をした。

ぼくに残された時間は少なく、昼夜を問わずに進まなければならない状況だった。その結果、突然の暴風と雷雨の極悪天候の深夜0時、ぼくは四国の南東に位置する室戸岬に到着した。(下図参照)

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下図はグーグルストリートビューから。

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晴天であればドライブにもってこいのオーシャンビューだが、ぼくは深夜0時の悪天候に身をさらしていた。

この室戸岬~東洋町の40キロの道のりには街灯すらほとんどなく、進めど進めど闇の世界が広がっている。そのことに気がつき、引き返そうと考えたが、どっちみち田舎だから数十キロは走らなければ雨宿りできる場所がない。それよりもタイムロスが出来るほど予定に余裕はなかった。

暗闇の室戸岬で頻繁に落ちる雷が「ゴロゴロ」と唸りながら、立ちすくむ僕をかすかに照らす。ザ―ッと落ちる雨が地面を跳ね、道路は川のように水が流れる。海は荒れ「ざっぱーん」と音を立てて護岸に激しくぶつかっている。傘もカッパも持たずに雨ざらしの僕を見た人は、きっと自殺志願者だと思うに違いない。

10メートル先も見えない闇夜で、1人立ちすくむぼくは前進を余儀なくされる。

道中で買った安い懐中電灯が唯一の救いだった。これでかすかに僕が見たい方向が見える。しかし、東洋町に向かって走り始めてすぐに思った。

「この地獄があと何時間続くのか?」

雨に晒されて、服が重いし走りにくい。夏とはいえ、海岸沿いは風が強いし、雨が冷たくて寒い。

ぼくはこの状況に恐怖を感じていたことをはっきり覚えている。

ここまでの悪条件がどうやったら整うのか?暴風、雷、荒波、大雨、暗闇、無人。

ぼくは自転車をこぐ修行僧になった。そして「無」となり、いつしか「自然」と一体化した。だから、何を考えて自転車をこいでいたのか全く覚えていない。ただただ恐怖しかなかったと思う。

そして、走り始めて何時間経過しただろうか。午前2時ごろのことだったと思う。

全く変わらない最悪の状況の中、うつろな目でひたすら自転車をこいでいた。

そこで、ぼくの自転車が突然ふっと軽くなったのに気がついた。

ママチャリ後部に載せた荷物を縛る紐がちぎれたのだ。

「おお、あぶないあぶない」と言いながら、落ちた荷物を取りに行った。そこでは特に何も思わなかった。

そして、またしばらく走っていると、今度は右足のスニーカーが突然「ふっ」とゆるんだ。

「なんだ?」と思い、止まって確認すると、今度は靴紐が切れていた。

靴紐なんてめったに切れるものではない。人生で初めてかもしれない。「こんなところでまじか」と思いながら、切れた紐同士を結んで走り出す。

靴紐が切れるというのは、不吉なこととされる。だから、なんだか嫌な予感がしたんだ。でも少しすると、忘れてまた無心になった。相変わらずの悪天候で意識が朦朧としていたし、とにかく眠い。

それから、10分くらい経っただろうか。今度は自転車で何か大きな物体を踏みつけたんだ。なんだか「うにゅ」っとしたやわらかい感触だった。居眠り運転のような状態だったのが、一気に目が覚めた。

恐る恐る振り返ると、イタチかキツネのような動物の死骸を踏みつけていた。

ぐちゃっと自動車に踏まれて死んだであろう死骸は血にまみれている。

それを自転車で踏んだ?ぞわぞわ~っと身体全体に鳥肌が立ち悪寒がする。

そして何故かぼくは自転車にまたがったまま、そこから動けなくなっていた。

さっきから気持ち悪いことが沢山起きるし、この状況はなんなんだ。自転車のハンドルに顔をうつ伏せて「ふーっ」と息を吐いた。

雨がざーっと音を立てている。

少ししてから、右手に持っていた懐中電灯を何気なしに山の方に当ててみた。

その懐中電灯はたまたま小さな地蔵を照らした。

「うっ」と思った瞬間「ガガガーン!」と大きな音の雷が鳴った。まるで神様が僕と地蔵にスポットライトを当てて、2人だけの世界を演出しているかのようだった。

その時、ぼくは地蔵の横に何かが居ることに気がついた。

全身が白装束の女性がいる。地蔵から一歩分引いた位置にずぶ濡れの女が立っている。若いのか老いているのか分からなかった。

女性はこちらを見てじっと動かない。

雷の「どどど」という振動を感じながら、ぼくは動けなかった。「これはなんかヤバい!」と思ったが、身体が反応しない。

実際には五秒くらいだっただろう。でも僕は凄く長い時間、彼女と目を合わせていた気がする。

雷が鳴り止んだ時、ふっと身体が動くようになり、僕はとにかく必死で自転車をこいだ。

後ろは怖くて振り返れなかった。とにかくあの場所から逃げたい!さっきまでフラフラだったのが完全に目が覚めた。「あれはなんだったんだ?」「幻覚か?」「やっぱり霊だよな?いやいやいや。」「怖い!」ということを考えながらひたすら逃げた。

結局、一心不乱に2時間ほど自転車をこぐと、どうやら東洋町に到着したようだった。

「眠すぎる」

雨宿りが出来そうなところを見つけたから、座って眠ろうとした。すぐにウトウトしていると、座っている僕に犬が寄り添っている。「野良犬か?なんだこいつは?」と思いながら、疲れ切ったぼくは気を失うように眠った。

 

そして5時ごろ、誰かがぼくに声をかけた。

さっきの恐怖で「ぎょっ」として振り向くと人が立っていた。

ぼくが雨宿りしていたのは家だったらしく、その家主が起こしたのだった。

僕の隣にはまだ犬がいた。ずっと居たんだなと思いながら「この犬は飼い犬ですか?」と聞くと「いや知らん」と言われた。

僕は本当に野良犬と寄り添って寝ていたようだ。17歳にもなって「眠いんだパトラッシュ」の名シーンを野良犬と再現出来るとは思わなかった。

家主のおじいさんに事情を話すと、家に招いてくれタオルを何枚も余るほどくれた。そしておにぎりを作ってくれた。男らしく形は整っていなかったけれど、ぼくはあんなにおいしいオニギリは食べたことがない。

少しおじいさんと談笑して、家の中で暖かみを感じていた。それは何日か振りに味わった家族の温かみだった。でも霊を見た話は怖くてできなかった。それを言うと何かが起きるような気がした。

と言うのも、おばあさんが少し前に亡くなったという話を聞いたから。

ぼくは何度もおじいさんにお礼を言った。そして早朝の7時から残りの旅路に出発したのだった。

※結果として、四国一周は達成し部活にも間に合ったので丸坊主は回避しました。

 

女チャリダーふれあい日本一周ひとり旅 (よく泣いてよく笑った 700日自転車旅日記)

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