対ボルトで男子100m走選手はどれくらい勝算がある?
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超今更ですが世界陸上in北京が盛り上がっていましたね。
ぼくがいつも楽しみにしているのは、人類最速を決める花形種目「男子100m走」です。今大会も優勝候補はもちろんウサイン・ボルト選手です。
2009年ベルリン大会の男子100m決勝で、ボルトが人類初の9秒5台となる9.58秒(+0.9m/s)(世界新記録)を記録したのは、未だに強烈な印象が残っています。ちなみにこのレースは2着のタイソン・ゲイが9.71秒。3着のアサファ・パウエルが9.84秒という人類史上最もハイレベルなレースでした。
あれから6年の時を経て、3選手が一堂に会する夢のレースが実現しました。
まずは、今回検証する世界陸上北京決勝のレース動画をどうぞ。
Usain Bolt Wins 9.79 100m Final IAAF World ...
レース結果がこちらです。赤背景にしてある選手が有力候補の選手達でした。
見事ボルト選手が大会2連覇を達成しました。やっぱボルトか。すげ~と思いながら、私はいつも疑問に思うことがありました。
陸上選手って何をモチベーションに走っているの?
だって大抵の場合、いくら努力しても選手の限界点が必ず存在します。ボルトみたいなポテンシャルが半端ないヤツと走っても絶対に勝てるはずがないのに、どうしてモチベーションが保てるのでしょうか。
どれくらいボルトに勝つのが無理ゲーなのか?
今回はこの点について調べてみます。
まず、ボルトに勝てるくらいの猛者を集めます。それは、今大会で有力候補とされた、先ほどの表で赤で記した5選手で問題ないでしょう。
次に、彼らの過去行われた試合の決勝戦タイムを集めます。なぜ決勝戦のみを抽出するかというと、みんな決勝以外本気を出していない可能性があるからです。
サンプル数は、ボルト28レース、ガトリン43レース、ブロメル12レース、ゲイ31レース、パウエル62レースが集まりました。ブロメルは19歳で出場試合数が少ないためサンプルが存在しませんでしたが、まあいいでしょうはい。
各選手ごとに、集めたレースタイムから箱ひげ図を作成してみます。
箱ひげ図の詳しい説明はしませんが、基本的に白い四角の長さは、各選手がよく出すタイムの範囲だと考えてください。一番左側の図はボルトのものです。ボルトは平均的に、9.77~9.90秒の間で走ることが多いということが分かります。また、それぞれの箱の一番下にバーがありますが、それが各選手のベスト記録です。つまり、ボルトが普段通りの平均的な記録を出すとき、その他4人の選手がベストタイムを出せばボルトに勝てるということです。
なるほど、
彼らはボルトが最高の状態じゃないことを祈りながら、自分のベストを尽くすつもりなのですね。
ボルト以外の選手たちは、自力優勝は断たれているけれど、ベストを尽くせば勝てる可能性も残っている訳です。
そういえば、今大会の予選を含めた最高タイムは、準決勝でガトリンが出した9.77秒です。一方、ボルトの最高タイムは9.79秒。
陸上におけるレースは、駆け引きなども勝負の一部とされ、その舞台で競争に勝った選手が勝者になるわけです。つまり、予選で世界新記録を出しても、決勝で負ければ金メダルは獲れません。しかしながら、ガトリンは準決勝のタイムをもう一度出すことができれば金メダルを獲得できていました。
「ガトリンがボルトに勝てる可能性は何パーセントだったのか?」
どうやら、過去の試合データを見る限り、パウエルやゲイは年齢の影響で既にベストタイムは出せそうもありません。ブロメルはまだ試合でのサンプル数が少ないので、未知数な部分が多いです。従って、現在ボルトに勝つ確率が一番高そうなのはガトリンだと考えます。
正規分布を作成して、各選手のタイムがどれくらいの確率で発生するのか、比較しながら考えていきます。
まずボルト選手です。
世界記録であるベストタイムをもう一度出す確率は10%。また、ボルトが決勝で出した9.79秒以上で走る可能性は42%です。
次にガトリン選手です。
ガトリン選手が準決勝の9.77秒より速く走る確率は12%の確率でした。この12%を連続で出すのは確率的には難しそうですね。
**********12/13 紫草様の (id:shigusa_t) コメントでご指摘がありましたように、ここから間違っています。***********
よって、ガトリンがボルトに勝つ条件は
・ボルトが58%の確率で9.79より遅いタイムで走る。
・ガトリンが16%の確率で9.79より速いタイムで走る。
よって計算は、0.58×0.16=0.093
9.3%の確率でガトリン勝利!!
…やはりボルト強いですね。実際の決勝タイム的には0.01秒の差ですが、絶好調でなくても勝てるというボルトの底力を感じます。
**********ここまで***********
12/14追記
大変失礼しました。これではガトリンの勝率を計算していることにはなりませんでした。ぼくは大きな間違いを犯してしまっています。
その間違いとは、彼らの勝負が9.79秒で決着が着くと断定してしまっていることです。(※しかも9.79秒が勝負の鍵になると考えた場合でもこうはならない。)
実際の彼らはレースを重ねる度に様々なタイムを出します。
例えば、ボルトが9.90秒を出した場合に、ガトリンが9.89秒を出して勝ってしまうような状況も考えなければいけません。
従って、実際にガトリンがボルトに勝つ可能性を求めるのであれば、 統計学的に有意にあり得る全ての条件を想定して計算する必要がありました。
なので、こんなに安直な方法でガトリンの勝率を低く見積もってしまい大変申し訳ありません。勉強不足にも程がありました。
このような問題に対して紫草様 (id:shigusa_t)が記事に起こして、詳しく解説して下さいました。
紫草様の記事では(二群間の勝利確率の推定について - shigusa_t’s diary)
乱数発生で片付くものは片付けた方が応用的には手っ取り早い。
「ベイズ推定で使われるモンテカルロ法でやるのが簡単だよ」というように解釈させて頂きました。(本当にありがとうございます!!)
せっかくなので、「対ボルト戦でのガトリンの勝率」の本当の正解を知りたい方は、紫草様の記事を是非ご覧ください。実際には、ガトリンも勝算があったことがわかりました。
この記事は、こういった問題にぶつかった際に非常に参考になると思われますので統計数字を扱う方にオススメです。
↓↓↓↓↓正解はこちらです↓↓↓↓↓↓
感想
まだまだ、勉強不足であることを実感致しました。今後も精進して参りますのでよろしくお願い致します。
おまけ
会社から5時ピタダッシュをしたい方、大人になっても未だにピンポンダッシュをしたい方は是非ご覧ください。走力が向上すれば時間短縮便益が向上し、豊かな人生を送れるハズ。です。
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